映画「アウトサイド」のネタバレ考察!ゾンビ映画おたくが徹底解説

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※当記事はネタバレを含みます。

Netflixにて限定配信されている映画「アウトサイド」。フィリピン初のゾンビ映画ということもあり、興味本位で鑑賞した方もいるのではないでしょうか。

一方で、「アウトサイドに出てきたゾンビは結局何だったの?」「フランシスはなぜ狂ってしまったの?」と気になっているかもしれません。

そこで、この記事では、年間40本以上のゾンビ映画を見る”ゾンビ映画おたく”が、ネタバレありでアウトサイドの内容を徹底考察します。

  • ゾンビが話す言葉の意味は何なのか
  • 腕時計が示唆するものは何か
  • フランシスはなぜ狂ってしまったのか

このような内容が気になる方は、ぜひご一読ください。「アウトサイド」という映画を通して、一緒にゾンビの魅力的を探求していきましょう。

なお、当メディア「ゾンビ映画部」では、ゾンビ映画作品のネタバレ考察やおすすめのゾンビ映画情報を発信しています。ぜひ、以下の記事もご覧ください。

目次

映画「アウトサイド」のネタバレ徹底考察

映画アウトサイドでは、いくつものゾンビが登場するが、本作は皆が期待するような従来のゾンビ映画ではないことをまずは伝えたい。

ゾンビ映画では、ド派手なアクションシーンや主人公がゾンビ相手に無双するシーン、ゾンビになった原因をリアルに究明する描写を期待している人も少なからずいるだろう。

しかし、本作におけるメインテーマはゾンビではなく、家族の在り方だと僕は考える。ゾンビはあくまで副次的な要素であり、愛を失ったパートナーと終末世界を生き抜けるかどうかが問われているのだ。

とはいえ、きちんとゾンビも出てくるので、そこは真面目に考察していきたい。

本作におけるゾンビの初登場シーン

まず、本作におけるゾンビの初登場シーンは、フランシスが生まれ育った家で父親の死体を発見した直後である。父親から腕時計を拝借し、部屋を後にするフランシスの視界に、突然母親のゾンビが何の前触れもなく立っている。

母親のゾンビはすぐに襲ってくるわけではなく、ただただ「Sorry」(ごめん)とくり返すのみ。

ゾンビ映画好きなら、このシーンを見て「この映画のゾンビは従来のゾンビと違う」と直感的に思った方もいるのではないだろうか。

なぜなら、従来のゾンビは人間を見つけた瞬間に襲ってくるからだ。もちろん、初登場でいきなり全速力で襲ってくるのは稀である。ただし、ゾンビである以上、ゆっくりでも近づいてきて襲おうとするのが常だ。

しかし、本作では母親ゾンビは「Sorry」とくり返すのみで襲ってくる気配が一向にない。フランシスに気づいても、襲う気配すら見せない。

「あれ?もしかするとこのゾンビは話が通じるのか?」と思わず淡い期待を抱く。

しかし、次の瞬間、その希望は一瞬にして打ち砕かれてしまう。

胴体のみになった直後、母親は「Sorry」をくりかえしながら、地面を這って襲ってくるのだ。目からは明らかに正気を感じられず、人間を食らおうとするゾンビそのものである。

最終的に、フランシスが持っていた銃で頭を撃ち抜かれることになるのだが、僕が感じたのは何ともいえない気持ち悪さだった。そして、一気にこの映画に引き込まれてしまった。このシーンがなければ、真面目に映画を見ていなかったと言っても過言ではないだろう。

本作に登場するゾンビの考察

本作に登場するゾンビが一般的なゾンビと違う点は、言葉を話すということである。それも意味不明な「ア”ア”」や「ヴヴ」ではなく、はっきりと。

以下に、本作に登場したゾンビが話した言葉をまとめてみた。

登場シーンゾンビの特徴セリフ
フランシスの生家フランシスの母親「ごめん」
橋の上男性の軍人「通行証を出せ」
中年男性「頼むよ、お願いだ」
一般市民の女性「買わせて」
男性の軍人「了解」
女性の軍人「はい、上官」
畑・家の前一般市民の男性「父と子の名によって」
中年の男性「ここは俺の土地だ」
若い女性「逃げてあなた」
若い男性「母さん」
老人男性「先に行け」
フランシスの生家ディエゴ(フランシスの兄)「あっちへ逃げろ」

ざっとこのような感じである。当初はゾンビになる直前に言っていた言葉を話すのかと思っていた。確かに「逃げて、あなた」や「母さん」は該当しそうだが、「了解」や「通行証を出せ」は該当しない。

つまり、ゾンビが発する言葉は、必ずしも死ぬ間際に言っていた言葉でないことがわかる。では、いったい何なのか?ここからは推測だが、生前、特に死ぬ直前くらいまでにもっとも感情が乗っていた言葉を発しているのではないだろうか。

たとえば、「母さん」は自分の母親に逃げてほしい一心で、「頼むよ、お願いだ」はゾンビに噛まれてしまい、ゾンビになる前に殺してもらいたいと懇願したとも考えられるだろう。

何となくセリフも棒読みではなく、口調が生前のままであり、力強さも感じる。ゾンビになった今も、生きることへの執着を表現したかったのかもしれない。

また、本作ではゾンビになる直接的な原因や世界中に感染が広まった理由については、一切明かされていない。

ただし、いくつかの描写からゾンビになる条件は見え隠れしている。たとえば、一家がフランシスの実家にやってきた直後に、フランシスが井戸から汲んだ水を飲んでいるのを一家が心配そうに見つめるシーンがあった。これはゾンビの血が水に混じっていた場合、フランシスがゾンビになることを恐れていたとも考えられる。

したがって、ゾンビになる条件のひとつに、ゾンビの血液が体内に入ることは間違いないだろう。また、終盤では腕をゾンビに噛まれたルーカスのために、アイリスは斧でルーカスの腕を切断していた。

このことからも、噛まれてすぐにゾンビになるわけではなく、時間の経過とともに徐々になることが示唆された。体感としては、ウォーキング・デッドに近いのかもしれない。ただし、ウォーキング・デッドのように、死んだだけではゾンビにならないことはフランシスが蘇らなかった点から推測される。

いずれにせよ、本作のゾンビは通常のゾンビとは違い、どこか人間らしさを漂わせている点で、よりリアリティかつ気持ち悪さを演出しているのは評価に値する。

フランシスが狂っていく様

序盤では優しく家族想いの父親として描かれているフランシスが、徐々に壊れていき、最終的に狂人になっていく様子も見どころである。

フランシスが狂ってしまった理由は言うまでもなく、幼少期に実の父親から虐待されていたトラウマと妻アイリスとの不和である。

そこにゾンビに襲われるかもしれないという恐怖が常に渦巻く世界で、心の拠り所もなく、狂ってしまった。もし父親からの虐待がなかった、あるいはアイリスとの関係性が良好であったならば、フランシスが狂うことはなかっただろう。

もとはといえば、アイリスは世界崩壊前にフランシスの兄であるディエゴと不貞行為をしていた。結果として生まれたのが長男であるジョシュアである。

ストーリーの前半では、なぜかジョシュに対してあたりのきついフランシスだったが、物語が進むにつれて、その理由が段々と明らかになってくる。ジョシュアとルーカスが家族のアルバムを見ている場面では、ルーカスから「お兄ちゃんはおじさんにそっくり」だと言われており、ここでもすでに伏線が張られていた。

ただし、不貞については実は劇中ではどの人物からも明言されていない。

フランシスとアイリスが喧嘩するシーンでも、アイリスは「ディエゴのところに行こうとした」とも言っていないし、フランシスがディエゴと対話するシーンでは、ディエゴは「一瞬の過ちだった」としか言っていない。

つまり、ここでもはっきりとした答えは言われておらず、さまざまな伏線や登場人物のセリフから「アイリスはディエゴと不貞行為をした」と思わざるを得ないのである。(ちなみに、ジョシュアがアイリスに「僕はパパの子どもじゃない」と言ったときにも、アイリスは肯定も否定もしなかった。)

本作では明言を避け、視聴者に想像・考察の余地を多く残してくれるが、不貞についても読者の中でそうとしか思わせないようにしているのはさすがである。

話は戻って、フランシスが狂ってしまったもうひとつの理由である、父親からの虐待についても考察していきたい。

児 童 虐 待 が 脳 に 及 ぼ す 影 響」によると、虐待を受けた児童の脳は少なからずダメージを負い、神経構造にも影響を及ぼすことが明らかになっている。つまり、幼い頃から虐待を受けていたフランシスは、何らかの社会的な障害や愛着の形成に問題があったように思われる。

そんな中での、ゾンビパンデミックとアイリスの不貞行為の発覚。狂うには、十分すぎる環境と精神状態ではなかったのではないだろうか。フランシスが狂ってしまったのは、ある意味では当然の結末だったのかもしれない。

徐々に狂っていく様子は、映画「シャイニング」を彷彿とさせるようだった。殺す必要のない老人のゾンビの首を鉈ではねたり、助けた軍人をハンマーで殴り殺したりと残虐性を見せる一方で、監禁したアイリスたちの前では、軍服を着て軍人のような真似事もしていた。

単なる残虐性のみではなく、このような違和感を覚えるような行動にも狂気が感じられ、ますますフランシスの壊れ具合がわかるだろう。

なお、本作に登場するキーアイテムとして、腕時計がある。冒頭ですでに死んでいた父親の腕時計をフランシスがつけており、これは残虐性の継承とも受け取れるだろう。

ちなみに、最後のシーンでは、ジョシュアはフランシスがつけていた腕時計を持っていかなかった。このことから、残虐性はジョシュアには受け継がれず、フランシスの代で終焉を迎えたことも暗示しているように感じられる。

もしも、ジョシュアが腕時計を持って行っていたら、将来フランシスのようになるかもしれないことを思うとゾッとするのは僕だけだろうか。

「アウトサイド」は非常に考察しがいのあるゾンビ映画だった

アウトサイドは、ゾンビ映画でありながらも、非常に考察しがいのある内容だった。ゾンビパンデミックが広まった背景や原因には全く触れず、物語の核心は常に家族の関係性にある。ゾンビ映画ファンの視点から言うと、ゾンビが生前に話していた言葉をしゃべる点はもっとも特異であっただろう。

本作のゾンビは、ウイルスに感染した生きた人間ではなく、死んでいるのは間違いない。それにもかかわらず、生前の言葉を発し続け、人を襲う様子はどこかこれまでにない不気味さを感じさせる。

主役であるフランシスも、最終的にはジョシュアにより銃で撃たれて死んでしまうが、最期にどこか安堵した表情を見せる。それはきっと虐待やゾンビウイルス、アイリスの不貞など、この世では常に満たされず、不安に駆られたフランシスにとって、死後の世界が唯一安心できる場所であり、ようやくそこに行けると感じたからではないだろうか。

本作はゾンビ映画だが、家族との在り方やパートナーシップを見直す良いきっかけになると思う。もう一度紹介したシーンを見たい方は、Netflixで飛ばしながら見ることをおすすめする。

なお、当メディア「ゾンビ映画部」では、ゾンビ映画に関する豆知識や”ゾンビ映画おたく”である僕が厳選した映画も紹介している。ぜひ他の記事も読んでみてほしい。

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